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漢方には「体質」と「証」がある!
「体質」という考え方
そもそもですが、漢方には「体質」という考え方があります。東洋医学では気と血、水の流れが悪くなると代謝が巡らなくなり、何かしらの体の異常が起きると考えられています。
「気」とは、生命エネルギーのことを指しており、日本語で言う「元気」「気分が悪い」に入っている「気」のことを指します。
また「血」とは、西洋医学や一般社会でよく言われる血だけではなく、栄養や潤いを与えるために、血流を良くするという状態も含んだ言葉です。
「水」とは、「水を飲む」の「水」だけではなく、血液以外の体全体の液体を指した言葉です。
そして、「体質」には
・気虚
・気鬱
・気逆
・血虚
・お血
・水滞
の6つがあり、全てに「気」か「血」、「水」の漢字が入っていますが、これは悪くなっている箇所のことを指します。
「証」という考え方
東洋医学には「体質」だけではなく「証」という考え方もあります。その人の体質や症状の出方、体力や抵抗力などを合わせて考えて、「虚証」と「実証」、「虚実混合証」の3つがあります。
「虚証」は体力や抵抗力などがない状態のことを指し、
「実証」は外から有害なものをもらい、
一見して元気はあるものの、疲れている状態(一般社会で言えば、燃え尽き寸前の状態)のことを指します。
「虚実混合証」は虚証と実証が組み合わさった状態で、平均的な状態を指します。
一見一番不健康なように思えますが、虚証の人も、実証の人も、この状態を目指しましょう。漢方では「証」も漢方薬を出すときに使うため、他人に処方された漢方薬に効果があるかというと、そうでもありません。
その体質と証によって出される漢方が違う
そして、漢方では体質と証によって同じような症状でも出される漢方薬が違います。なので、漢方が気になっていて、漢方薬で治療したいと考えている人は、日頃から体質と証をチェックしておいて、いざとなったときに効果的な漢方薬をスピーディーに出してもらえるようにしたほうが、便利です。
どうやって体質をチェックすればいいの?
体質は、以下のチェックリストでチェックできます。当てはまるものを選び、最終的に一番多くなったグループが、あなたの体質です。
A
すぐ疲れる
食欲がない。また、すぐ下痢を起こす
運動音痴、もしくは運動嫌い
すぐ風邪や、病気にかかる。
胃下垂っぽい
すぐねんざや肉離れになる
ため息をつくことが多い
B
食べ物の好き嫌いが多い
生理不順でなおかつ、生理前にたくさん食べることが多い
すぐストレスを溜めるタイプだ
すぐ落ち込む
怒りっぽく、全体的に感情の波が激しい
胃もたれをすることが多い
げっぷやおならが多い
C
顔色がよくなく、唇や爪の色が薄い
めまいや立ちくらみなどが多い
疲れやすく、貧血になりやすい
肌荒れや小ジワが増えてきたと思う
髪にツヤがない。枝毛もある
生理が遅れ気味、なおかつ経血量が少ない
爪が薄いので、折れやすい
D
顔色が悪く、くすんでいる
手足が冷える
日焼けや傷跡がなかなか消えない
肌のくすみやシミがある
肩や首、背筋が凝りやすい
生理痛が重く、レバー状の塊が出る
目にクマがある
E
のぼせやすい。手足が火照りやすい
肌や髪が乾燥する
暑がりで冷房が好き
便秘ぎみでコロコロ便がよく出る
口が渇きやすく水分を取ることが多い
冷たい飲み物が好き
目の充血、渇きも多い
F
寒がりで下半身の冷えやむくみがある
よくトイレに行く
胃腸が弱い、体力もない
軟便が出て、下痢気味
温かい飲み物をよく飲む
顔が青白い
あまり体を動かさない
上記のチェック表で、一番多くついたタイプが…
A:気虚タイプ(今回のテーマです)
B:気滞タイプ
C:血虚タイプ
D:お血タイプ
E:陰虚タイプ
F:陽虚タイプ
です。今回のテーマである「気虚」タイプはAが一番多く当てはまった人のことです。
気虚タイプの特徴
「気虚」は、「気が弱くなり、疲れやすくなり、気力や消化力が低くなっている状態のことです。
このタイプの場合、基本的にエネルギーが不足しやすいので、3食の食事を取って、十分な睡眠時間を確保し、疲れたら休む…ことが症状の改善の鍵になります。
体質を改善するためにはどうすればいいの?
気虚は確かに疲れていますが、その疲れの原因はある人は「仕事が激務」であれば、またある人は「人間関係でのストレス」であり、他にも「外の環境が悪い」「外と中の寒暖差が激しい」といった理由でも体調が悪くなります。
ですが、東洋医学では「気は空気や飲食物から取り込むもの」と考えられ、私達が普段口にする空気や食べ物、飲み物に「気」が入っていないと、体調を崩します。
なので、普段都会に住んでいて、緑が少ない環境に住んでいるのであれば、「森林浴」や「田舎への旅行」などで、良い空気を取り入れましょう。また、ハウス栽培の野菜や、工場内で栽培された野菜などを食べている人も多いかと思いますが、漢方医学では太陽を浴びて育った野菜が一番気に効果があるとされています。中には「旬ではない」食べ物を食べることが多い人もいますが、なるべく太陽を浴びて育った旬の野菜を食べるようにし、食べ物から気を巡らせましょう。
胃腸の調子が悪くなったら…
よく、胃腸の調子が悪くなって鉄板焼きや焼肉などをたくさん食べて回復しようとする人がいますが、鉄板焼きや焼肉などで気は良くなりませんので、症状は改善されません。
風邪やインフルエンザなどで体調が悪くなったとき、おかゆを食べることが多いですが、胃腸の調子が悪くなったらおかゆを食べましょう。おかゆでは元気が出なさそうですが、胃腸の調子が悪くなったときは胃腸の回復と気の回復を一番に考えなければなりません。
普段から気虚タイプの人には冷たいものや油っこいもの(さっきの鉄板焼きや焼肉も!※)、なまものは勧められませんが、胃腸の調子が悪いときはなおさらです。これらは消化して吸収するだけでかなりエネルギーを使うので、栄養バランスを保つ程度に食べましょう。
また、日常生活の中で深呼吸する回数を増やすのもいいでしょう。気虚の人は、体調を崩したら真っ先に体調を悪くしたところを良くするのと、気の流れを良くすることを考えて、生活しましょう。
※ただ、牛肉や豚肉、鶏肉には体を温める効果があるため、
冷たく調理したり、
必要以上に油っこくしたり、
半生の状態で食べるのは健康に良くないですが、
温かく調理して、さっぱり目に仕上げ、しっかり焼けばむしろ効果的な食事になります。
漢方医学で「気虚」タイプの人は食生活と普段の過ごし方に注意
漢方医学での「気虚」は、気の状態が弱くなったことを指します。そして、その場合「じんわりと元気になる」「気の流れを良くする」アプローチを取り、状態を脱さないと、体調が良くなりません。あまり「ガツガツと元気になろう!」と思わず、ゆっくりと体調を戻す気持ちで生活しましょう。